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記憶のメカニズム

記憶のメカニズム

 

百年以上も前に、ドイツの心理学者が行った有名な実験があります。その実験は単語を覚えてもらい、それらをどれくらい長く覚えているか調べてみるというものですが、実は単語を「忘れる速度は人によってほとんど違いがない」のです。(一般に「忘却曲線」と呼びます)。初めの4時間で半分くらい忘れてしまい、そのあとは平らに近いカーブを描きます。

 

ですから、脳は「覚えること」よりも「覚えないこと」を得意とするのです。「必要」と判断するのは、脳の「海馬」になります。短期記憶を司る「海馬」は、何度も何度も繰り返し送られてきた情報により、「しつこくやって来るのだから、必要な情報に違いない」と勘違いして、長期記憶を司る「大脳皮質」に情報を通過させます。それにより長期記憶できるようになっていきます。つまり、短期記憶「海馬」を介して、長期記憶「大脳皮質」が形成される仕組みなのであり、短期記憶をいかに活用するかが勉強のカギなのです。記憶は、先ほど述べたように、忘却曲線に従い忘れていきますから、「復習すること=忘れる速さが遅くなること」につながります。(計算違いなどのケアレスミスが多い人は、筆算が乱雑で整理されていないことが多いです。)

 

学習には、知識や情報の整理整頓が必要な作業ですが、不用意に大量の知識を短期間に詰め込むと、記憶が混乱し曖昧になって、勘違いの原因になります。脳の性質を無視した無謀な勉強は、時間の無駄になり、場合によっては逆効果となってしまいます。

 

勉強の量だけで成績が決まるのではありません。それ以上に大切なことは、いかに勉強するかという「質」の問題です。勉強のしかた次第で結果は大きく変わります。海馬は、情報の種類によって短い場合、情報を一ヵ月かけて整理整頓し、何が本当に必要なのかを選定します。1か月以上あけて復習すると、海馬にとっては、はじめての学習と同じになってしまうのです。

1か月以内に何度も復習すれば、海馬をダマすことができます。海馬に「より多くの情報を送ったほうが勘違いする可能性高くなる」のです。手で書いたり、声に出したりするなど、五感をフル活用しましょう。復習効果は、同じ対象に対して現れます。参考書はアレコレ取り替えず、絞り込んで最後まで使い切りましょう。

 

脳は、出力依存型なので、記憶するには出力(チェックテスト)が大事です。
「何度も脳に情報を送り込む(インプット)」ばかりではなく、「何度も情報を使用する(アウトプット)ことが重要」なのです。脳は使い方次第です。

復習の目安としては

①回目→学習した翌日、②回目→1週間後

③回目→2回目からさらに2週間後、④回目→3回目からさらに1か月後

このように間隔をあけて復習していきましょう。

最後に、みなさんは、学校から帰宅して寝るまでの間、どの時間帯に勉強時間していますか? 帰ってからゆっくり過ごして、夕食後に机に向かう人が多いと思いますが、実は、お腹のすいているときのほうが記憶力は高まります。ぜひ試してみてくださいね。

 

プロ教師:佐藤正博

参考文献『受験脳の作り方』池谷裕二:著(新潮社)←大人向け

『勉強脳のつくり方』池谷裕二:著(日本図書センター)←小学生向け

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