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新・我が家の本棚 Ⅷ 【ピルチャー編】
新・我が家の本棚 Ⅷ 【ピルチャー編】
今回は、1993年初版発行、イギリスの女性作家の短編翻訳本【ロザムンドおばさんの贈り物 ロザムンド・ピルチャー 著 中村妙子 訳 晶文社】です。
著者は1924年生まれ、18歳の時に初めて作品が雑誌に紹介されて以来次々に短編・長編を発表し、イギリスのみならずアメリカ、インド、韓国などにも多くの愛読者がいて、数か国語に翻訳されている世界的にも人気の作家でしたが、この翻訳本の出版当時はまだ日本語に翻訳された作品はなく、訳者による『婦人之友』への短編連載が初の日本語翻訳版だったそうです。
「自分も自然に文中の登場人物になっている」「外国の話なのにとても身近に感じられる」と連載への反響も大きく、その結果一冊の本として発行されたのがこの【ロザムンドおばさんの贈り物】でした。
『…ピルチャーの「時」にたいする感覚の確かさをしみじみと感じました。若い者は老いた者の生き方をじっと見つめながら、現在の自分、まだ生まれ出ていない、将来の自分を考えている。年老いた者は過ぎ行く時とともに動いている自分を意識しながら、あたたかい目を若い人に注いでいる。…スコットランドの自然が、それをふかく愛する者の筆で描かれていて、わたしたちをいっとき、その中へと誘ってくれます』(訳者あとがきより)
短編集の原書は二冊、【The Blue Bedroom and Other Stories】(1985)と【Flowers in the Rain and Other Stories】(1991)で、その中から「あなたに似たひと」「午後のお茶」「日曜の朝」「週末」などが収められています。
『冬のスキー場。自分に自信が持てなくて、彼への思いがくじけてしまいそうな少女。週末の短い旅で、ひとつの約束をする恋人たち。新しく家族になった父親と幼い娘たちが、少しずつ心を開きあっていく、ある日曜の朝の風景……。
登場人物たちは、みな、とまどいのなか、小さな勇気を出して、人生の次のステップへと、ふみだしていきます。
ささやかな物語にこめられた大切な真実。イギリスの田園に流れる、たっぷりした時間。珠玉の短編を七つあつめた、香り高く、豊かな贈り物です。』
ちょっと昔の外国の田舎の風景や生活様式を思い浮かべながら、登場人物たちの胸のうちを想像しながら、物語の展開にドキドキしながら読み進め、その結末に本当にあったかい気持ちになれる、そんな作品がそろった短編集です。
~工藤先生より~
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