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新・我が家の本棚 Ⅵ 【やどかり編】

新・我が家の本棚 Ⅵ 【やどかり編】
今回は1995年第1刷発行【なつのひかり 江國香織 著 集英社】を紹介いたします。
著者は小説家、児童文学作家、翻訳家そして詩人であり、その作品は短編長編の小説・童話、エッセイ、絵本、詩集と多岐にわたり、数多くの著書が出版されています。
毎日新聞社花いちもんめ《小さな童話》大賞、フェミナ賞(フランスで最も権威ある文学賞のひとつ)、産経児童出版賞、坪田譲治文学賞、紫式部文学賞、直木賞といった数々の賞も受賞、作品の多くが映画やテレビドラマ化されている、有名な女性作家です。
隣の部屋の少年が飼育しているやどかりのナポレオンが部屋に迷い込んだ夏の日。
その日から、主人公の栞とその周りの人たちをめぐる「奇妙な物語」が始まります。
「〈それ〉を探しに行く」と手紙を残し失踪する義姉、兄の重婚の判明と突然部屋に居候し始めるその相手、やどかりに尾行されたり道案内されたりしながら行き着いた夕方5時の世界。
そしてたどり着く「不思議な真実」、義姉が探しに行った〈それ〉とはいったい何だったのか。
栞と兄と義姉と愛人、双子の姉妹や野菜の屋台のおばさんなど、栞と兄をめぐる奇妙で愛しい人たちの話とともに展開される、不思議な追跡の物語です。
現実の世界で話が展開されていたのにいつの間にか別の世界に足を踏み入れている、夢の世界なのか幻想なのかそれもまた現実なのか、そんな不思議な感覚の中で物語がくり広げられます。
主人公を中心にたくさんの人物が複雑にからみ合い、それぞれが生きてきた過去と現在の生き方、点と点がつながるようで複雑すぎてつながらないような、ちょっと理解が難しい、20歳の栞の夏の物語。
この夏、もういちどじっくり読んでみようかと思います。
~工藤先生より~

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