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故事成語の世界へようこそ(二十八)漁夫之利(ぎょふのり/ぎょほのり)

第二十八回:「漁夫之利(ぎょふのり/ぎょほのり)

 

 

 

今月は、「漁夫之利」という故事成語をご紹介していきます。

漁夫(ぎょふ)とは、ぎょほとも読み、漁師のこと。

昔中国にあったある国の王様が、隣の国に攻め込もうと考えていた時のお話です。

 

 

 

古代中国の戦国時代のことです。

日本の戦国時代と同様、この頃は今の中国がある地域には多くの国があり、互いに自国の領土を広げようとしていました。

ある時、趙(ちょう)の王様が、隣国の燕(えん)を攻め滅ぼそうと計画していました。

その時、蘇大(そだい)という名の遊説家(ゆうぜいか)が趙王に考えを改めるよう説得にやってきます。

遊説家とは、諸国を巡り、諸侯に自分の政策を売り込んでまわった人のことです。

 

 

 

蘇大は、趙王に挨拶するとこう言いました。

「今燕側から趙に向かって移動している途中で、ある川を渡りました時のことでう。

蛤(はまぐり)が出てきて、口を開いておりました。

そこに鷸(いつ)という鳥がやってきて、蛤を食べようと、貝の開いた口にくちばしを突っ込みました。

すると蛤はすかさず口を閉じて鷸のくちばしをはさみ、食べられまいと応戦しました。」

 

 

 

ここで「どうして貝と鳥??」と思った人もいるかもしれませんね。

これは故事成語にはよくある「例えばなし」なのです。

ぜひこれ以降のお話を、何を何に例えているのか考えながら読んでみてください。

 

 

 

蘇大は趙王に話を続けます。

「鷸が蛤に対し『今日雨が降らず、明日も雨が降らなければお前はこのまま干からびた貝になって死んでしまうぞ(=だからその口を開けろ)』と脅せば、

蛤も蛤で、鷸に対して『そっちこそ、俺がこのまま口を開かなければ、何も食べられずに飢えて死んだ鷸になってしまうぞ(=だからそのくちばしをはなせ)』と対抗します。

お互いにお互いをはなそうとはしません。

蛤と鷸がお互いにもみ合い、身動きが取れなくなっているうちに、

1人の漁師がやってきて、蛤と鷸を両方とも捕らえてしまいました。

今私が心配しているのは、趙の背後にある強国の秦が、この漁師のようになることなのです。」と。

蘇大の話を聞いた趙王は、心から納得し、燕に攻め込むことはやめたということです。

 

 

皆さんは、蘇大が語った例え話の中で、何が何に例えられているか分ったでしょうか。

蛤が燕、蛤を食べようとしている鷸は趙、両者を捕らえた漁師は秦でしたね。

燕と趙が互いに争っているうちに、強国である秦によって両国とも攻め滅ぼされてしまう危険性を、蘇大は趙王に訴えたのです。

このように、「二者が争っているすきに、第三者が利益を横取りすること」を例えて、「漁夫之利」といいます。

今回のような例え話は故事成語には多く出てきますので、また機会があればご紹介したいと思います。

 

 

 

 

 

 

本日の故事成語:漁夫之利…二者が争っているすきに乗じて、第三者が利益を横取りすること。

 

 

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