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新・我が家の本棚 Ⅴ 【トールキンの世界】
新・我が家の本棚 Ⅴ 【トールキンの世界編】
今回は1997年に初版発行の【ホビット ゆきてかえりし物語 J・R・R・トールキン 著 ダグラス・A・アンダーソン 注 山本史郎 訳 原書房】をご紹介いたします。
『ホビット』の初版は1937年にイギリスで出版されました。
以来、続編と位置づけられる『指輪の王』(『指輪物語』)との矛盾点を修正するために第5章の書き換えを行った1951年出版の第2版、アメリカにおける『指輪の王』出版を受けて1966年にイギリスで出版するために改訂を加えた第3版、学校用として製本されたハードカバー版のための修正、さらにそこに紛れこんだミスプリントの改訂版と、何度も改訂を重ねた歴史があります。
以後異なる版がさまざまに出版されていますが、その版独自のミスプリントが出現しているそうです。
付録「本文および改訂の歴史」において注釈者は『この注釈版『ホビット』を製作するにあたって私が胸に抱いた目的は、こうした誤りをすべて正し、トールキンが最終的に意図した形になるだけ近い本文を実現することである。』と述べています。
そうした想いから本書はトールキン自身が手を加えた最終版である1966年版がもととなっています。
『おいしい食事と平穏を愛する小さい種族ホビット。そのなかでも裕福で学問好きなビルボ・バキンズは、ある気持ちのいい朝、魔法使いのガンダルフに出会い、お茶に招くことに。ところが、やってきたのはガンダルフのほかになんと13人の矮人(ドワーフ)たち。邪竜(ドラゴン)に奪われた先祖伝来の宝の奪回に向かう血気盛んな連中だった!ーちょぴり人(?)が好くてそそっかしいビルボがくりひろげる血湧き肉躍る大冒険!!』
長編で独特の世界、一読では理解しきれない難しさも感じますが、悪鬼(ゴブリン)、巨人、ゴクリ、鷲の王、妖精王といった登場人物(?)とともに灰色山脈、霧の山脈、闇の森、ヒースの枯野などの冒険の地で展開されるファンタジーの世界は、やはりワクワクドキドキさせてくれます。
学者の方々のように矛盾点などといった難しいことは考えずに、ひとつひとつの冒険ひとつひとつの場面を、自分なりの想像と、巻頭のトールキン自身によるカラーの挿し絵や随所に添えられた各国版のモノクロの挿し絵とともにただ楽しむ、静かな場所で時間の経過を忘れて思う存分読みふけりたい、そんな1冊です。
~工藤先生より~
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