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故事成語の世界へようこそ(三十四)石に漱ぎ流れに枕す(いしにくちすすぎながれにまくらす)
第三十四回:「石に漱ぎ流れに枕す(いしにくちすすぎながれにまくらす)」
今回は大変負けず嫌いな人物のお話を紹介したいと思います。
中国の晋の時代のこと。
孫子荊(そんしけい)という人がおりました。
この人は大変な才能の持ち主で、また同時に、大変プライドの高い人だったようです。
子荊が若い頃、彼は隠居して静かに暮らしたいと考えていました。
そこで友人である王武子(おうぶし)に、隠居したいことを伝えようとしたのです。
「流れに漱ぎ、石に枕せん」と。
(当時はこれが隠棲(いんせい)することを表していたのですね。)
ところが…
子荊は言い間違えて、
「石に漱ぎ、流れに枕せん」と言ってしまいました。
武子はその言い間違いに気付き、
「石で口をすすぎ、流れを枕にして寝ることなどできるのか」
と言い返します。
普通の人ならここで言い間違いを認めるのでしょうが、
相手はプライドが高く負けず嫌いの孫子荊です。
彼はどのように対処したかというと…。
子荊は武子にすぐさまこう切り返しました。
「石で口をすすぐのは歯を磨くため、流れを枕にするのは俗世間の話を聞いて汚れた耳を洗うためである」と。
彼はどうしても言い間違いを認めたくなかったようですね。
この故事をもとに、「石に漱ぎ流れに枕す」または「漱石沈流(そうせきちんりゅう)」が
「こじつけて言い逃れること。負け惜しみの強いこと。」を表す言葉となりました。
また、明治の文豪である夏目漱石のペンネームは、この故事から取ったものと言われています。
漱石の性格がこの故事成語から伝わってくるような気がしますね。
本日の故事成語:石に漱ぎ(くちすすぎ)流れに枕す…負け惜しみが強く、自分の誤りに、屁理屈をつけて言い逃れることのたとえ。負け惜しみの強いこと。漱石枕流(そうせきちんりゅう)とも。
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