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我が家の本棚 XVⅡ 【タクシー編】

我が家の本棚 ⅩⅦ 【タクシー編】
今回は、多くの作品を小学校の国語の教科書等でご存知の方も多いと思われます
【新装版 車のいろは空のいろ 1 白いぼうし あまんきみこ 作 北田卓史 絵 ポプラ社】
を紹介いたします。
運転手の「松井五郎さん」のタクシーは、ピカピカの空色。そのタクシーに乗車してくるお客さんは、なぜかみんな「松井さん」を不思議な出来事に巻き込んでいきます。
『空いろの車を町で見かけたら、きっとそれは松井さんのタクシーです。手をあげて、車のざせきにすわったら、「お客さん、どちらまで?」それが、ふしぎな旅のはじまりです。』
落とし物と思って拾い上げた帽子の中から蝶が飛び立つ表題の『白いぼうし』のほか、パンクしたタイヤの交換を手伝ったキツネの兄弟が乗客の『小さなお客さん』、年老いた女性が戦争で亡くした子どもたちに会いに行く『すずかげ通り三丁目』、人間によって山を追われ人間の姿で人間の世界で生きるクマとの出会い『くましんし』など、計8話が収録されています。
ファンタジーでありながら、人生や社会の現実、課題について考えさせられる作品ばかりです。
巻末の解説で西本鶏介氏は『すぐれたファンタジーといえば、まっ先にヨーロッパの作品を挙げる人がいます。
…魔法のすばらしさや複雑な社会を生きる哲学は教えてくれても日本人の自然観とはほど遠く、繊細であたたかな美意識が不足しています。
…私たちが賢治童話に魅かれるのは自己犠牲の崇高さにあるのではなく、自然も動物も人間も一つになれるやさしさにあります。
…日本人でしか書けない情緒性と想像力に富むさわやかなファンタジーです。
いつ、どこからでも、もう一つの国へ旅立つことができ、その感動を持ったまま現実へもどることができます。』と、あまんさんの作品と、有名な本格的ファンタジーと名高いトールキンの【ホビットの冒険】やエンデの【モモ】との相違点を指摘しています。
なぜ、あまんさんの作品に懐かしさや親しみを感じるのか。
海に囲まれ、時には甚大な災害を引き起こすものではあるけれど常時は豊かな自然の恵みを与えてくれる山や川が全国各地に存在し、その中で暮らす多種多様な動植物がいて、色鮮やかな四季がめぐる日本。
自然環境の破壊が進んでいるとはいえまだまだ多くの自然を感じることができる、そんな国に暮らしているからこそ共感できるあまんさんの世界観があるからだと思いました。
多くの人が新生活に向けての一歩を踏み出す、春。
卒業、入学、新社会人といった大きな一歩でなくても、進級、異動といった形で新生活がスタートする人も多い、春。
そしてそれが当たり前であるかのように、人間社会の変化と自然の移り変わりとが共存する日本。
雪深く寒さが厳しかった今年の冬も終わり、当然のように、福寿草やふきのとうといった小さなものから梅や桜といった華やかなものまで様々な植物が春の訪れを告げ、そんな自然に囲まれてまもなく多くの人が新生活をスタートさせるのですね。
桜、咲く。
卒業生のみなさん、卒業おめでとうございます。
受験生のみなさん、合格おめでとうございます。
そして新年度に向かい進んでいくすべての方々にエールを送るとともに、懐かしくあったかい気持ちと心を癒やしてくれる優しさにあふれた、あまんさんの作品をおすすめします。
~工藤先生より~

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