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新・我が家の本棚 Ⅲ 【グリム編】
新・我が家の本棚 Ⅲ 【グリム編】
今回のご紹介は
【ベスト・セレクション 初版グリム童話集 編訳 吉原高志・吉原素子 白水社】
です。
ベストセラーとなった【初版グリム童話集】全4巻から、初版でしか読めない話を含め選ばれた36話が挿し絵とともに楽しめる、1998年発行の書籍です。
グリム兄弟は1812年のクリスマスに童話集初版第一巻を世に出し、1815年に初版第二巻を刊行後、版を改めるたびに筆を入れていきました。
兄弟が生前最後に出した第七版では200話の昔話と10話の「子どもの聖者伝」が収められ、現在一般に流布し読まれてきた『グリム童話集』はその第七版をもとに翻訳されたものです。
書き替えや書き加えがなされた背景には、初版に対し兄弟に寄せられた「語り口にあまりに飾り気がない」「話の選択や表現が子ども向きでない」などという批判がありました。
それに対し兄弟は、情景や心理描写を詳しくし会話表現を増やすとともに性的事柄や残酷な話を削除していき、結果、「子どもと家庭の昔話」という原題にふさわしい内容になっていきました。
初版には挿し絵は入っていませんが第二版には末弟による扉絵が付けられ、それ以降は当時のすぐれた画家たちによってさまざまに描かれて、「語られるのを耳で聞く」形で享受されてきた昔話が目でも楽しめるものになっていきました。
本書には19世紀半ばから20世紀にかけて描かれた挿し絵が多くの画家から取り上げられています。(あとがき要約)
『グリム兄弟が書き替えや書き加えの作業をはじめる前の童話集の原形、あらゆる童話の原点とも言うべき『初版グリム童話集』を、これまで読まれてきた第七版と読みくらべ、初版がもつ魅力を味わってください。』(あとがきより)
「白雪姫」「狼と七匹の子やぎ」「ヘンゼルとグレーテル」「赤ずきん」「灰かぶり」ほか、初版でしか読めない「子どもたちが屠殺ごっこをした話」「馬鹿のハンス」「青髭」「長い鼻」などが収録されています。知っている内容とは違う場面や結末がある話、まったく知らない話、グリム童話とは知らずにいた昔話など、あらためて読んでおもしろい発見があった一方、やはり「子どもと家庭の昔話」というよりは大人が愉しむ童話集だなと感じました。
~工藤先生より~
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