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我が家の本棚ⅩⅣ 【骨董屋編】

我が家の本棚 ⅩⅣ 【骨董屋編】
今回は、骨董品に秘められたすばらしい冒険物語を骨董屋の女主人〈高田さん〉が小学生の〈レンちゃん〉に語って聞かせるお話、【銀杏堂 橘春香 作・絵 偕成社】です。
〈高田さん〉がどのようにしてそのお宝を手に入れたのか、14の危険で不思議なファンタジーの世界が語られます。そしてその話を通じて〈レンちゃん〉が感じたことや疑問に思ったことを語り合います。
ふたりの関係は友だちのようでもあり人生の先輩としてさまざまなことを教え教わる師弟のようでもあり、冒険の話にはもちろんわくわくドキドキさせられますが、ふたりの会話の部分にもとても魅力を感じます。
『このエメラルドはユニコーンの悲しみの結晶だ。でも、そのなかにはしあわせが埋まっている。…悲しみの石がこんなに美しいものなのだとしたら、わたしは一生この胸に、この石をかかえて生きていってもかまわないと思えた。』
『…人を美しく見せるのは、しあわせなときだけではないかもしれないね。ひめられた悲しみもまた、人を美しく見せるものかもしれないね』(四つ葉のクローバー入りエメラルド)
『やつはとんでもないあまのじゃくで、信用してもらえるなんて考えは、あまかった。そこで、べつのものがたりをお手本にすることにした。本っていうのはこんなふうに、生きる知恵をあたえてくれるものなのさ。』(サバンナの逃げ水)
『天使の羽ペンだの、インクだの、そんなものは、ありゃしない。人のだいじな運命をそんな羽ペン一本で気まぐれに決めちまうような、いじわるな天使なんてどこにもいない。それに、もし望みをかなえたいなら、そんなもったいぶったとくべつなペンじゃなく、コンビニで売っているボールペンで十分さ。それでレシートのうらに書いたって、ちゃあんとかなうってことを、わたしは知ってるからね』(すべての望みをかなえる羽ペン)
『お宝だと信じてたよ、いままではね。だけど津波でなにもかもうしなってしまった人たちを見ていたら、こういうお宝なんて、なんの価値もない気がしてきたのさ。』
『ものをうしなうと、どうして悲しいのかといえば、思い出をうしなった気がするからなんだね。いまを生きることもたいせつだけど、人間はそれだけじゃ生きられない。歴史や思い出こそ、宝でもあるんだ。その思い出をものにたくすと、そのものはかがやく。』(ぼたもちお手玉)
話している相手が小学生では少し難しいのでは?と思う内容もありますが、だからこそおとなが読んでもおもしろいのかもしれません。
〈レンちゃん〉が学校で〈大きくなったらなりたいもの〉の作文をほめられた日、〈高田さん〉はまた遠くへ冒険に出かけてしまいます。報告できなくてとてもがっかりした〈レンちゃん〉でしたが、『冒険する骨董屋』をかっこいいと思う気持ちと新しい冒険のお話をきくことを楽しみに待つ気持ちが、〈レンちゃん〉を明るい気持ちにしてくれます。
ファンタジーでありながら経験豊かなおとなの人生観にふれられるような、不思議な感覚の一冊です。
~工藤先生より~

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