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新・我が家の本棚 Ⅹ 【遠き道編】

新・我が家の本棚 Ⅹ 【遠き道編】
物語や童話をあつかうことの多い本シリーズですが、今回は1989年初版発行
【詩集 ロマンス 銀色夏生 著 角川文庫】
をご紹介いたします。
                                                 銀色夏生(ぎんいろなつを)は1960年宮崎県生まれの詩人、文筆家で、1985年に第一詩集【黄昏国】を河出書房新社より刊行。
以後、【つれづれノート】シリーズ、旅行記、写真詩集、言葉とイラストの本など、著書は160冊を超えます。
21歳の時に、善と悪、黒と白など相反するものは同じであるとの見方で世の中のものを見るようになり、興味を惹かれた物事や人物を研究する日々を送り、2018年春にその研究は終わったと感じ以降は「外的要因に左右されない個人的幸福を追求すること」へ人生の舵をとります。
 ・どの道を行こうとも選んだ道がベストの道
 ・どこからどこを見るか、どの範囲で区切るか、で意味が
  変わる
 ・すべてはプラスマイナスゼロ
  (公式ホームページより抜粋)
詩集刊行前の1982年に作詞家として活動を開始、山元みき子名義で歌詞を提供していますし、近年はYou Tubeでの配信やnoteでの音声ブログ配信など、詩人であり随筆家、写真家、作詞家でもある多才な女性です。
                                                『たぶん特別ではなく たぶん誰でも同じように 悲しい気持ちになったり 知らないことやこわいことに驚く たぶん誰でも同じように やさしくなったり 片思いをつらく感じる たぶん誰でも同じように 時には泣く
 素敵だと思うのは 素敵だと感じる自分自身の中にある何か だからちゃんと憧れは現実に精算される
 感情はあやふやだけど 目的はわかっている 瞳の中に 本当に
 だから特別ではなく たぶん誰でも同じように みんな輝く悲しい詩人である』(プロローグ)
                                                『私の心は弱いのです だからといって 私を弱いと思わないように
 とてもたくさんのことがあります とてもたくさんのまちがったことも
 本当でないと思っても そうしてしまうこともあります いけないことをしたりもします
 私の心は強いのです だからといって 私を強いと思わないように』(私の心は)
                                                『いつも笑うと決めたなら それでいいけどそのかわり 決して泣いちゃだめだ いつも笑うと決めたなら 最後まで笑いぬけ 簡単にひるがえる決心なら 心を失っていくばかりだ』(決心)
                                               『人間はみんな心の奥底はとても弱くていい人だから そんなに弱くていい人の心だけですべてのことに接すると物事のすすみぐあいが悪いのでいじわるでこわい人のおめんをつけてる いじわるでこわい人のおめんと つめたくて自分勝手な人の服と やきもちやきでわがままな人の靴と 気まぐれでけちんぼうな人の帽子と うわさ好きでウソつきのカバンをもって もっといろいろなそううっかり気に入られないためのたくさんの種類のバッジをいっぱいつけて生きている(以下省略)』(人間は)
                                               『星と星のあいだにあるのは まっくらやみではなくて ただ見えないだけでたくさんの星
 まっくらやみのように見える夜空は 無数の星で満ちている
 からかわれているようなたよりない私たちの 人生は 風に吹かれる木の葉のようで それは あの夜空からとても遠い
 けれどそれは確かにあの夜空の中にあって どこかからきっと あの夜空などど呼ばれている』(星々のあいだ)
                                               『あっという間に消えてしまう 言い訳だけにつながれて 後ろ姿を見ていると 笑顔の顔だけ浮かびます…(中略)
 やっぱりねボクはダメだねと 夢も見ないような口ぶりで ようようあなたは言いました 来年の春はそれぞれの 立身出世を祈りあい 累累たる夢荒野 劣情烈火をしかりつつ ロマンスの道は遠かりき 我と我が身を はげまさん』(ロマンスの道)
                                                懐かしい恋心を思い出させてくれる多くの恋愛に関する詩が中心ではありますが、力をもらえるような、一方で肩の力が抜けるような、そんな言葉がたくさん詰まった詩集です。
                                                 ところで「外的要因に左右されない個人的幸福」とは何なのでしょう。
とても理想的な幸福の姿に思えますが、よく考えるとわからなくなります。
「外的要因」に相対するものは「内的要因」ですが、どこからが「外」でどこからが「内」なのか、「個人的」と対をなすのは「社会的」ですが、個々人が社会の一員として生活している以上は社会と切り離して個人を考えることはとても難しい…個人の物事のとらえ方次第、ということでしょうか。
                                                結論が出ないままですが、簡単にわかることではないからこそ著者は追求なさっているのだろうと思うことにしました。
                              ~工藤先生より~

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